ゼリーのようなくらげ
母が入院してから、夕食時に父がいないのは初めてだった。SNSを眺めながらドリアを口に運ぶ。相変わらず多くの人が怒っている。まともに国会で議論しない政府与党を批判する投稿にいいねをし、フェミニズムをテーマに作られた雑誌の宣伝をリポストする。スプーンが皿にあたる音が静かに響く。
(「金色のスープ」より)
五感に突き刺さる濃密な表現で女たちのやるせなさを突きつけてくる本書を読んでいると、おぞましいもの、厭わしいものをこそ真っ向から見据えろ、と叱咤される気がする。
推薦=小竹由美子(翻訳家)
読みながら登場人物たちの人生に思いを馳せると同時に、読者としての自分の人生も否応なしに続いていくという事実に圧し潰されそうになった。傑作だと断言できる。
推薦=岸波龍(機械書房)
閉じこもる者たちの、閉じているゆえの破綻——。地方の町を舞台に、恐れ、怒り、無力感を抱えながら生きる女性たちのリアルを、繊細な筆致で描く4つの短編小説。徳島在住、三田文學新人賞佳作を受賞した注目の作家による初の小説集。
著:髙田友季子
発行:サウダージ・ブックス
ページ数:192
判型: B6判変形
発行年月日:2025年6月30日
■著者について
髙田友季子(たかた・ゆきこ)
1985年、徳島県生まれ。2017年、「乾き」で第23回三田文學新人賞佳作受賞。『徳島文學』や『巣』に作品を発表している。