【古本】本という不思議
今まで本という文化は、若いうちに本を読めというような掛け声とともに、ともすれば若い世代の「ための」文化のようにとらえられがちで、またそういうものとして疑われることがなかった。けれども、今日にしてやっと若い世代の本離れ、活字離れが社会的にひろく云々されるようになってきたというのは、むしろようやく本という文化が社会的に成熟の兆しをみせて、ともすれば若い文化としてしか考えられてこなかったような時代が終わりつつある結果というふうに考えるべきだ、と思うのです。
子どもの「ための」本という考え方が失効しているように、若い世代の「ための」本という考え方もすでに失効しているのではないか……いい年になったらちゃんと本を読み、若いときにちゃんとジョギングをしたほうがずっといい、と思う。
いい年になったらというのは、一人に返される年齢になったら、ということです。じぶんというものが一人に返されてはじめて、ほんとうに本への欲求というものがじぶんのなかに切実な思いとしてでてくると思える。本を読むというのは、言葉に対してじぶんから一対一の関係を結ぶことなのですから、本と付きあうとは、すなわち一人のじぶんの姿勢、ありようをいま、ここにみずから質す機会をもつということです。
(「なぜ本なのか」)
ル=グウィンやランダル・ジャレルの世界から『悪魔の辞典』へ、アパラチアのアリーおばさんからジョージ・オーウェルの人生へ。本と読書と人をめぐる詩人による極上のエッセーを集成。
著:長田弘
出版社:みすず書房
発行年月日:1999年5月20日 第3刷
定価:2,400円+税(版元品切)
状態:良い/小口に一部シミあり(写真5枚目)
値札を剥がした跡あり(写真6枚目)/帯なし
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【おまけ】
本のすみかでご購入いただいた本にはブックカバーをお付けすることができます。
詳しくはSHOPPING GUIDEをご確認ください。
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