優しい地獄
『雪国』を読んだ時「これだ」と思った。
私がしゃべりたい言葉はこれだ。
何か、何千年も探していたものを見つけた気がする。
自分の身体に合う言葉を。
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社会主義政権下のルーマニアに生まれたイリナ。
祖父母との村での暮らしは民話の世界そのもので、町では父母が労働者として暮らす。
川端康成『雪国』や中村勘三郎の歌舞伎などに魅せられ、留学生として来日。
いまは人類学者として、弘前に暮らす。
日々の暮らし、子どもの頃の出来事、映画の断片、詩、アート、人類学……。
時間や場所、記憶や夢を行ったり来たりしながらつづる自伝的なエッセイ。
《本書は、社会にうまく適応できない孤独な少女の記録であり、社会主義から資本主義へ移っていくルーマニアの家族三代にわたる現代史でもある》
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五歳の娘は寝る前にダンテ『神曲』の地獄の話を聞いてこう言った。
「でも、今は優しい地獄もある、好きなものを買えるし好きなものも食べられる」。
彼女が資本主義の皮肉を五歳という年齢で口にしたことにびっくりした。
——本文より
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【古賀及子が愛読しすぎているエッセイ・日記本たち/古賀さんコメント】
ルーマニアに生まれ、日本で研究活動を続ける著者がこれまでを描くエッセイ。
読みながらずっとふるえた。幻想的な読み心地から、体験がむしろ実体的に伝わる。
「つらかったというより、今にしてみればある種の踊りにしかすぎなかった」
「暗闇の中では、体の感覚は薄くなるが、味を感じる」
思いもよらない身体性を、ルーマニアと日本、両方からの土着的な視座でもってとらまえて
見せてくれる。
著: イリナ・グリゴレ
出版社:亜紀書房
ページ数:256
判型:四六判
発行年月日:2022年8月2日 第1版 第1刷
この本は、2024年3月3日 第1版 第4刷
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【おまけ】
本のすみかでご購入いただいた本にはブックカバーをお付けすることができます。
詳しくはSHOPPING GUIDEをご確認ください。
https://honnosumika.base.shop/blog/2023/08/07/231352