いつかたこぶねになる日
世界を愛することと、世界から解放されること――詩はこのふたつの矛盾した願いを叶えてくれる。南仏・ニース在住の俳人である著者は、海を空を眺めながら古今東西の先人たちの詩(うた)を日々の暮らしに織り交ぜて、新たなイメージの扉をしなやかにひらく……。杜甫、白居易、夏目漱石、徐志摩らの漢詩を優しく手繰り寄せて翻訳し、いつもの風景にあざやかな色彩を与える、全31編のエッセイ集。
【古賀及子が愛読しすぎているエッセイ・日記本たち/古賀さんコメント】
「わたしにわかること、それは死ぬことよりも考えることの方がずっとさみしく、また考え
ることよりも在ることの方がずっと悲しいといった、日常をつらぬく背骨だけだったのだ。」
フランス在住の俳人による、漢詩と暮らしのエッセイ。詩と立つ、詩をみつめる、詩と
生きる、そのありさま、そのようすがこんなにも美しい。
いま手のなかにあっても、いずれ何もかもが立ち消える。そんな喪失と孤独に、書くこ
とによって肉薄しながら、どうしてこんなに静かでたおやかでいられるんだろう。
著:小津 夜景
出版社:新潮社(新潮文庫)
ページ数:256
判型:文庫判
■著者について
小津夜景(オヅ・ヤケイ)
1973(昭和48)年、北海道生れ。2000(平成12)年よりフランス在住。2013年「出アバラヤ記」で攝津幸彦記念賞準賞、2017年句集『フラワーズ・カンフー』で田中裕明賞を受賞。その他、句集『花と夜盗』、エッセイ集『カモメの日の読書 漢詩と暮らす』、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者・須藤岳史との共著『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』などがある。